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事件メモ(当事務所が取り扱ったの事件の紹介です)

事件メモ 目次

不用意な投薬で損害賠償認める――医療過誤訴訟で完勝!!

弁護士 足立賢介

 昨今、医療現場での事故やミスに関する報道を目にしない日はありません。平成16年10月から財団法人日本医療機能評価機構が医療事故情報の収集・分析、そして医療事故防止のための情報提供をおこなっていますが、医療現場での事故やミスは一向に減る気配がありません。
 先日、透析患者に対する心臓病の薬の投与の仕方が問題となった事案で、神戸地方裁判所は、医師の過失を認め、被告病院に損害賠償を命じました。依頼者であるKさんの奥さんは、もともと腎臓が悪く透析を受ける必要がありました。心臓にも問題があったため、前医の大学病院で大動脈弁の手術を受けた後、術後管理と人工透析を主な目的として被告病院に転院しました。
 入院数日後、主治医は、Kさんの奥さんを共観していた大学病院の医師から依頼された心臓病の薬を投与しました。この薬はシベノールという薬で、添付文書(使用上の注意等を記載した医師・医療機関向けの文書で医薬品に添付される文書)では透析患者への投与は低血糖による意識障害等を引き起こす危険があることから禁忌とされているものでした。にもかかわらず主治医は、その依頼に従って透析患者であるKさんの奥さんにシノベールを投与してしまいました。その結果、Kさんの奥さんはシノベールの副作用である低血糖による意識障害を引き起こし、その後、意識を回復して家族と話をすることさえできるようにならないまま亡くなりました。
 訴訟においては、被告病院は、投薬は大学病院の医師の指示に従っただけで主治医に責任はない、そもそも心臓病の術後管理は診療契約の対象ではないなどと主張しました。しかし判決は、入院患者に対する管理責任、そして添付文書上禁忌とされている透析患者にシノベールを漫然と投与したことの主治医の過失を認定しただけでなく、Kさんの奥さんが主治医の過失よって死亡したことまで認定するという、原告の主張を全面的に認める勝訴判決を得ることができました。
 被告病院は、訴訟においては自らの過失を争ってはいましたが判決後、控訴することなく損害金の支払いに応じてきました。被告病院自身、主治医の行為に問題があったことを否定できないと判断したのでしょう。
 病気やケガで入院したり、手術を受けたりしなければならなくなったとき、患者本人はもちろんその家族も非常に大きな不安を感じながら、医師を信頼して治療を委ねます。医師は、そのような信頼を受けるに値するだけの専門的知識と技術を備え、細心の注意をはらって患者の治療に当たらなければなりません。
 専門家である医師には診療の際に幅広い裁量が認められていることもあり、医療過誤訴訟では必ずしも患者の望んだ結果が得られるとは限りません。しかし本件のように、患者側の主張が認められることもあります。医療現場での事故やミスは、患者が声をあげない限り減ることはありません。もしかしてご自身やご家族が医療過誤にあったのではないかと思っておられるお困りの方は、一度当事務所までご相談ください。

(2010/11/08)

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契約締結後約11ヶ月経過した後のクーリングオフ

弁護士 河原林昌樹

 皆さんは、特定商取引法(特定商取引に関する法律)という法律をご存知でしょうか。平成12年に訪問販売法が改称されてできた法律です。
 訪問販売や通信販売、電話勧誘販売などの一定の取引形態を特定商取引として、契約書面の交付などの義務を販売業者に負わせるとともに、クーリングオフや契約解除時の損害額を制限するなどして購入者の利益を保護しようとした法律です。
 本件は、平成14年7月に墓石を購入する契約を締結した事例です。購入者であるYさんは、墓参の都度、霊園まで送迎するという墓石販売業者の約束を信じて契約締結しましたが、実際にはその約束がはたされず、購入代金の一部を支払ったものの、残代金の支払いをしなかったため、販売業者からその支払いを求めて裁判を起こされました。
 Yさんは、販売業者の請求に対し反訴を起こし、墓参の都度、霊園まで送迎すると約束しながら実際にはその約束が実行されておらず、このような販売業者による不実の告知を受けたために契約を締結したものであるとして消費者契約法による契約の取消しを主張するとともに、特定商取引法によるクーリングオフを主張し、既払い金の返還を求めました。
 特定商取引法によるクーリングオフが認められるためには、購入した商品が「指定商品」でなければなりませんが、墓石はそれに含まれます。クーリングオフは契約内容を明らかにする法定書面の交付を受けてから8日以内にする必要がありますが、本件の場合、Yさんの自宅で契約締結されたにもかかわらず販売業者から法定書面が交付されていなかったため、8日間のクーリングオフ期間がそもそも進行していなかったのです。
 販売業者は、Yさんのクーリングオフの主張に対し、Yさんの自宅で契約締結したのはYさんの請求によるもので、本件契約にクーリングオフの規定は適用されないと主張するとともに、契約締結前何度も打合せを重ねていた本件は購入者に熟慮期間を与えるとともに不適正な勧誘を抑制しようとしたクーリングオフ制度が想定するようなケースではなく、契約締結後約11ヶ月経過してからのクーリングオフは権利濫用であると反論しました。
 しかし、判決は、販売業者の反論を斥け、クーリングオフに関する特定商取引法の規定を厳格に適用してYさんの請求を認めました。約11ヶ月経過後のクーリングオフは販売業者にとって酷となる面を否定できないとしつつも、法定書面の交付を刑罰でもって強制している特定商取引法の趣旨を徹底させたものとして購入者の利益を保護するものとして評価できます。
 特定商取引法や割賦販売法などの消費者保護関連の法律は適用場面が明確なため、有効な手段として利用できます。業者との取引でお困りの方は、一度ご相談ください。

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職場の分煙を求めて ――JR西日本分煙訴訟

弁護士 谷 英樹

 JR西日本では、本社社屋内は禁煙とされているのに、車掌が待機したり休憩したりする乗務員詰所は、これまで禁煙ではなく、まったく自由に喫煙することができました。そのため、時間帯によってはたばこの煙がもうもうとし、被喫煙者にとって耐えがたい状態でした。
 車掌のAさんは、この状態は耐えがたいと会社に対して何度も分煙措置とを取るよう申し入れましたが、会社は拒否。Aさんが申し立てた調停でも、分煙措置を取ることをいっさい拒否しました。
 そこで、やむなく提訴したのがこの裁判です。
 たばこの煙には多くの有害物質が含まれており、単に不快感をもたらすだけではなく、アレルギー症状やガン、心疾患などの重大な病気を引き起こす原因となることは、現在では常識となっています。他人の吸うたばこの煙を吸わされることを受動喫煙といいますが、職場でこのような不快感や健康被害をもたらす受動喫煙を強いられるいわれはありません。これが裁判で分煙措置を求める理由です。
 裁判が始まると、とたんにJRは一部の乗務員詰所を禁煙にしました。裁判に先立つ交渉や調停ではあれほど強行に不可能だなどと主張していた禁煙措置をとったのですから、実は裁判を訴えられるまでもなく、すぐに実現できたはずです。
 2004年12月22日に判決が言い渡されましたが、現時点では一部の乗務員詰所について全面禁煙の措置をとっていることなどを理由に、禁煙措置を行うべき義務と損害賠償義務を否定しました。しかし、これは逆にいえば、一定の喫煙対策をとらなければ違法になることを示すものです。
 また、判決は、受動喫煙は様々な自覚症状による苦痛と生理学的反応の急性影響を引き起こすとともに、各種のがんや虚血性心疾患、呼吸機能の低下や成人の気管支喘息の悪化などのリスクを増加させるという慢性影響をもたらすことを認定しました。これは、受動喫煙による健康被害を否定するJR西日本とたばこ業界の主張を明確に排斥したものです。
 なお、この裁判については、次のホームページもご覧ください。
  兵庫県喫煙問題研究会
    http://isweb39.infoseek.co.jp/family/notabako/

(2005/05/15)
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